法学部 (日本語)
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他の法律も関わる難しい問題ですが︑理論と訴訟実務のバランスを探りながら解決基準を考える過程はまさに知的冒険です︒先人の議論の積み重ねに︑ほんのわずかでも自分の考えを乗せることができたときの達成感は格別です︒  法律は知っているか︑知らないかでものの見方や考え方が変わるんだなということを︑法律が身近にあるからこそつくづく実感します︒法律的な視点を培うなかで︑複雑な社会を生き抜く勘所や感覚が導かれるはずです︒  法律に関することは︑日々の新聞記事だけでなく︑小説やマンガにおいてさえ頻繁に目にするのに︑大学の法学部となるとお堅いイメージを持つ人が多いのはなぜでしょう︒法律とはそもそも皆さんのとても身近にあるものです︒  私が専門とする租税法関連では︑最近︑所得税の支払いが生じるボーダーライン﹁103万円の壁﹂の問題が︑多くの人たちの関心を集めました︒これも法律改正に関わる問題です︒このように法律というものは︑とても身近で実社会に深く根ざしています︒したがって︑法律を学ぶと︑社会の動きや仕組みが理解できるようになりますし︑これまでとは違った目で世の中を見ることができるようにもなります︒日常生活でも︑法的な思考をする人とそうでない人には差が出ます︒  でもそれは︑裏を返すと絶対的な正義や正解がないことの証しでもあります︒裁判ひとつ取ってみても︑立場によって法律の見方や解釈が異なるのです︒法は生き物です︒さまざまな法改正や判例等を通して構造化された法的な思考プロセスを習得することで︑全体を把握する理解力︑相手の考えを敬う想像力︑良い結論を導く洞察力が磨かれ︑鍛えられていきます︒私のゼミでも︑条文を暗記するのでなく︑対話を重視しており︑また学生どうしの議論によって相手を説得する術を学ぶようにしています︒租税法は法学における最先端領域ですので︑私も常に知識をアップデートしながら︑学生からも多くの刺激を受けています︒  ﹁法を知り︑使いこなす﹂ とは︑複雑な社会を逞しく渡り歩くための”知性の武器“を手にすることにほかなりません︒きっと︑人生の彩りを豊かにしてくれるはずです︒ �SpecialKaori Nakamoto法学学術院准教授。学部生の頃には、民事訴訟法のゼミに所属し、ロースクール在学中では、民事訴訟法の勉強が最も興味深く面白いと感じる。その後、司法試験に合格したものの、博士課程に進学し研究者の道を選ぶ。 准教授 中本 香織 「現代社会と法」について語っていただきました

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