ざるものとなるのです。 それでは、制定法である 「法律」に関する科目の学習だけでそれらの能力をしっかりと修得できるか、といえば、 それだけではまだ十分ではないのです。 お話ししたことからお分かりになりましょう、法の根底にある私たちの観念の形成に与る思想や歴史等についての確かな知識もまたなくてはならない重要なものとなるのです。 そのため、 東京専門学校創立当初に設置された法律学科からの伝統を有す早稲田大学法学部は、 「法律」にとどまらない広く法学に関する多数の科目を提供して充実した専門的法学教育を行うとともに、 外国語・一般教育に関する多数の科目も提供して法のあり方に影響を与える思想や歴史等についての教授も行い、 バランスのとれた法学教育を実践してきました。 このような教育の成果は、 卒業生の進路が多様であることに顕れています。 多種多様な公務員職や企業への就職はもちろんのこと、 裁判官・検察官 ・ 弁護士という法曹、さらには法学研究者へとみなさんの先輩たちは進んでおり、 日本にとどまらず、世界の各地で、 社会の諸分野で活躍されています。さあ、今、手にされているこの冊子の頁を繰り進んでください。法学学術院長・法学部長田村 達久 法学部での学修の対象である 「法」とは何か。 「社会あるところ法あり」 (ubi societas, ibi jus.) との法諺が示すとおり、 私たちが日々生活している社会では、様々な問題が生じるとともに、 今後生じうる課題が存在するため、 それを解決するときの拠り所となる、 私たちが了解し承認した共通のルール、 規範が必要となりますから、 その共通のルール、規範が法であることは間違いないでしょう。 法を学ぶということは、 ですから、 まずは、 現に存在する共通のルール、規範が何であり、それが具体的にはどういう意味、 内容であるのかを知り、理解することになります。 そして、その知識を活用して具体の問題などを自ら解決できる応用力を身に付けることにもなります。 法解釈能力、技術としての法の運用能力を修得するということです。 しかし、これだけは十分ではありません。 今、私たちの前にあるそのルール、 規範は、これまでに発現した事象や得られた経験などから形成された既存の観念に基づき定められているものですから、 新たな問題などの公正、 適正な解決を必ずしも保証してくれるわけではありません。 既存の法の限界を知り、 現在または将来の社会におけるあるべき法を考えること(法形成能力)も大切となり、これもまた法学の学修において欠くべからMESSAGE早稲田法学の扉をまさに開かんとするみなさんへ�
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