文化構想学部・文学部 (日本語)
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教 授 8文学部日本や欧州とは異なる視点から見えてくる世界の広さがある五十嵐大介ラーム世界の政治・経済・文化の中心として繁栄したマムルーク朝について研究しています。エジプトの国立図書館や公文書館には、マムルーク朝時代に書かれた歴史書や法学書、寄進文書などが保管されています。読み解いていくと、当時の国家や社会の姿だけでなく、人々のライフ・ヒストリーや家族観なども浮かび上がります。同じ史料でも、どこにフォーカスして読むかで得られる情報は違ってきます。歴史研究の面白さであり、研究者の経験値やセンスが問われるところでもあります。 私がマムルーク朝に心惹かれたのは、学生時代に読んだ研究書がきっかけです。さらに■ると1991年に起きた湾岸戦争が、中東地域に目を向ける最初の契機になりました。昨今の中東情勢に関するニュースを、関心を持って受け止めている人も多いことでしょう。「今何が起きているか」だけに注目するのではなく、そこに至るまでの歴史的背景を100年、200年と■って見ていくことが大切です。現在起きている事象をより正確に理解する助けになるからです。 近代の学問の多くはヨーロッパ起源であることから、私たちの認識の枠組みそのものが、実はヨーロッパ中心主義の影響を多大に受けています。大学での学びを通して、自らの価値観や尺度を相対化する視点を養い、“世界の広さ”を知ってほしいと願っています。中東・イスラーム研究コースに進級した2年生の必修演習です。研究に必要な資料・データの収集方法を習得し、それらを批判的に読み、まとめる力を養います。学生の関心はアラブポップス、イラン映画、パレスチナ文学、ハラールフードなど多様です。現地の情報を得るためにも言語の習得は大切。アラビア語をはじめとして多数の言語を学べる早稲田の環境を大いに活用してください。中東・イスラーム研究は対象とする分野が広く、誰もが興味のあるテーマを見つけ学問として究めることができます。発表準備を進める中で、研究に不可欠である文献を批判的に読み、まとめる力を身につけられるだけでなく、質疑応答に参加し知識を吸収することもできます。先生との距離が近く、疑問点は何でも相談できる恵まれた環境の中で、学ぶことの楽しさを実感できます。マムルーク朝時代の学院(カイロ): 運営方法を定めた寄進文書が残されている学生と一緒に文献を読み、議論します受講学生の声演習紹介IGARASHI Daisuke専門は中世アラブ・イスラーム史。中央大学大学院文学研究科東洋史学専攻単位取得退学。博士(史学)。東京大学次世代人文学開発センター特任研究員、中京大学非常勤講師などを経て現職。大学院時代には青年海外協力隊員としてシリアで2年間、古文書の整理作業に従事した経験も。「中東・イスラーム研究演習1」13〜16世紀にかけて、イス VIEW

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