7アメリカの大学院で博士号を文化構想学部准教授ビジュアル作品に対する自分の中のワクワクやモヤモヤを言葉に溝口彰子取得した私の論文テーマは、BL(ボーイズラブ)と女性のセクシュアリティーズです。BLの歴史をたどるとともに、2000年代以降の商業BLにおいて、ホモフォビア(同性愛嫌悪)を乗り越えるヒントを示す“進化形”の作品が増えていることを論じました。この論文をもとに日本語でまとめた書籍は中国語と韓国語にも翻訳されました。現在は、近年増加している実写映像作品も含めて、表象が我々の価値観や現実の制度にどう影響しうるのかという根源的な問いをBLの側から考える研究を英語で進めています。 マンガや映画はエンタメであると同時に、ときに人の命を救い得るほどの影響力を持ちます。日常で触れるドラマや映画やマンガに、心を揺さぶられたり、あるいは腑に落ちないものを感じたりした経験が皆さんもあるでしょう。視覚文化研究とは、学際的な理論を駆使して、そんな「ワクワク」や「モヤモヤ」を言語化すること。私のBL研究は、BLの祖先である1970年代の「美少年漫画」のおかげで自分が同性愛者であることを受け入れられたことに気付いたことで始まりました。自分にとって思い入れのある作品を学術的に分析することは、自分の価値観や審美感をつかみ、他者と連帯し、生を充実させることでもあります。テレビやネット動画、映画、マンガ、広告、美術など、さまざまなイメージ文化の中で表象されるジェンダーとセクシュアリティについて考えるゼミです。英語圏の大学生向けの視覚文化入門書をベースに基本理論を学ぶほか、実作品の分析に取り組み、自身の「好き」や「モヤモヤ」を言語化するスキルを磨きます。作り手をゲストに招いて制作背景を学ぶ機会も設けています。受講学生の声LGBTQの正しい知識を得ても、タブーを恐れて言葉ばかりに気を取られる環境に問題意識を持ち、ドラァグクイーンの方のお話しを伺いたいという願いを叶えていただき、実際にブルボンヌさんのお話を聞くことができて嬉しかったです。一人一人考えが違う中で、第三者や世の中が枠組みを決めてしまうのではなく、社会にいる私たち全員が多様な身体があって個人差があるということをもっと意識していくべきと感じ、他人や社会と比べるのではなく、ありのままの自分自身を認めることで自己肯定感にも繋がってくるのだと思いました。BLの重要な祖先といえる萩尾望都さんとの トークショー女装パフォーマー/ライター ブルボンヌさん ゲスト講義演習紹介MIZOGUCHI Akiko専門はジェンダー論、視覚文化研究など。上智大学外国語学部卒業。ファッションとアートの仕事を経て、米国ロチェスター大学大学院ビジュアル&カルチュラル・スタディーズ・プログラムにて博士号取得。2023年より現職。YouTubeチャンネル「BL with AKIKO」ではBL情報を英語で発信。「イメージ文化ゼミ」INTER
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