文化構想学部・文学部 (日本語)
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高校までの歴史の学習は「すでに分かってい大切なのは「今」や「自分」を相対化する視点「日本史演習3 A、B(中世)」演習紹介取り組んでいる研究テーマ8日本中世史の中でも、戦争や災害、環境に焦点を当てた研究をしています。当時の戦争や災害の実態はどのようなもので、それに対し人々はどのような技術や考えを持って対処したのかを、史料やフィールドワークを通して探っています。「非常時」という切り口から、中世日本の国家や社会の特質を見極めることを目指しています。大阪府での古文書の調査専門は日本中世史。慶應義塾大学文学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科修士課程、同博士後期課程修了。博士(文学)。東京学芸大学教育学部講師、准教授を経て、2019年より現職。子どもの頃から歴史が好きで、寺社や史跡を巡るのを趣味にしていた。奈良県でのフィールドワーク(石造物の調査)2年次から履修可能なこの演習では、日本中世史を研究する上で欠かせない変体漢文史料の読み方の基本を身につけます。当時の貴族の日記を教材に、一言一句丹念に読み進めながら、訓読や現代語訳に取り組みます。地道な学びですが、基本を習得することでいろいろな史料が読めるようになっていく、その楽しさを体感してほしいと思います。准教授ることを覚える」ことが中心になりがちです。これに対し、大学における学問としての歴史の研究とは、「まだ分かってないことを見つけ、考察する」営みであり、暗記学習とも趣味愛好の歴史とも、性質は大きく異なります。 分かっていないことを見つけるための研究方法の基本は、古文書や歴史書などの文献史料をつぶさに読むことです。中世の史料には「変体漢文」と呼ばれる日本特有の文体が常用され、読み解く上では漢文や古文の知識が求められます。はじめはとっつきにくいかもしれませんが、徐々に読めるようになってくると嬉しいもので、大いに学びがいを感じられるでしょう。また、これまで知られていなかった史料そのものが新たに発見されることが今なおあり、研究者として胸が高鳴る瞬間です。各地の寺社や旧家が所蔵する史料の所在や状態を定期的に調査し、適切に後世に伝えていくことも、歴史研究者の使命だと考えています。 未来の人々から見れば、私たちが生きる現代も、歴史の中の特異な一時代に過ぎないでしょう。「今」を相対化する目を持つことや、自分たちの「当たり前」が実は不確かなものであると気付くことが、より良い未来を考える一歩となります。そこに、歴史を学ぶ意味や目的があると思います。下村 周太郎SHIMOMURA Shutaro文文学学部部

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