新4 人文学とは である。人に対する飽くなき興味ない」「許せない」と憤りを覚える人は多いでしょう。それと同時に「犯罪に走るような人は自分とは違う人間で、到底理解できない」と思うかもしれませんが、果たしてそうでしょうか。私の専門である犯罪心理学では、個々の犯罪者や非行少年の思考や行動にはどのような特徴があり、その何が関係し合って犯罪や非行をするに至ったのか、本人を取り巻く環境にも目を向けながら分析し、理解を進めます。その過程で見えてくるのは、その人が図らずも置かれた状況によって、つまり同じ人間のちょっとしたボタンの掛け違いで、犯罪に至るケースが多々あるということです。「自分とは違う」と思考を止めるのではなく、人を非行や犯罪に走らせないためにはどうすればいいのか、私たち一人ひとりにできる支援とは何なのか、一歩踏み込んで考えるきっかけになるでしょう。追究していくことが、人文学の全般に通じる要素です。日ごろ抱く「この人はなぜこんな言動をするのだろう」という疑問や違和感、あるいは「自分のことがよくわからない」というモヤモヤなど、あらゆることが探究の起点になります。誰しもが内に持つ人間への尽きぬ興味を意識化し本質を探っていく、人文学の面白さと奥深さを体感してみませんか。聞やテレビで日々報じられる犯罪のニュースに、「信じられ人に対して飽くなき興味を持ち、ゼミ合宿で参観。内部撮影不可のため、門前の集合写真心理検査の採点を行なっているところ専門は犯罪心理学、非行臨床。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院文学研究科修士課程修了。法務省矯正局に入局し、少年鑑別所鑑別技官や法務総合研究所室長研究官等を歴任。早稲田大学文学学術院助教授を経て、2009年より現職。折に触れて読み返す「星の王子さま」は自身の原点に立ち返る一冊。人文学を学ぶ上で早稲田大学の魅力は?人に対する興味を追究していく上で、多様な背景を持つ学生が集う早稲田のキャンパスは非常に刺激的な環境です。相手を知っていく中で文化や考えの違いに触れ、多様性を肌で感じながら理解を深めていく。そうした経験を日常的に積める場だと思います。注力している研究テーマは何ですか?かつて若者を犯罪へと向かわせた要因の一つに、社会の中で居場所や役割を見いだせない孤立・孤独感や鬱屈した感情があると考えられてきました。現代では高齢者がその立場となっていることが、高齢者による犯罪の増加につながっているのではないかという仮説の下、研究を進めています。また女性犯罪者に注目し、彼女たちが犯罪に至った経緯を分析する研究にも力を入れています。教授藤野 京子文学部
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