入学案内(日本語)
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国籍や移民について研究CHEN TIEN SHI82国籍を持たない、あるいは持てない理由は人によりさまざまです。私のように国家間の外交関係の変動に起因すするとともに、無国籍の人々を支援する活動にも携わっています。この背景には、今は日本国籍である私自身が、長く無国籍者だったことが関係しています。台湾から日本に移住した両親のもと、横浜中華街に生まれて間もない1972年の日中国交正常化に伴う日本と台湾の国交断絶により、日本の法律上で無国籍となりました。日本の居住権はあり、生活で大きく困ることはなかったのですが、大人になってからは無国籍を理由に国連の採用試験を受けられなかったり、空港で危うくどこの国にも入れない事態に陥ったりと、衝撃的な体験をするなかで無国籍の研究を本格化させていきました。る場合もあれば、国際紛争、民族差別、法律の不備が原因となることもあります。そのため無国籍の問題を考えるときには国際関係や政治、歴史、法律、文化など多くの分野が関係します。このように現実社会の問題は1つの学問に収まるものではなく、異なる分野の知識や視点を組み合わせて解決の道を探ることが重要になります。リベラルアーツの幅広い学びが可能な国際教養学部は、その実践の場です。追究したい問題を起点に、複数の学問分野を行き来しながら広く深く、学びを発展させることができます。多くの人にとって国籍は、あって当たり前のものでしょう。そうした自分の当たり前を問い直す経験を大学で積んでほしいと思います。国籍、民族、性別などにかかわらず誰もが人として平等に暮らせる社会にするために、私たちは何ができるのか。世界から多様な学生が集い、多言語が飛び交うこの学部で一緒に考えてみませんか。筑波大学国際関係学類卒業、同大学大学院国際政治経済学研究科博士課程修了。博士(国際政治経済学)。国立民族学博物館准教授、早稲田大学国際教養学部准教授を経て、2016年より現職。専門は国際関係論、文化人類学。陳 天璽国際教養学部 教授MESSAGE FROM PROFESSOR現実社会にある問題を起点に分野を超えて広く深く探究を

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