入学案内(日本語)
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コンピュータは速く正確にOGITA TAKESHI112計算できる、という認識を多くの人が持っていることでしょう。複雑な計算を高速でこなすコンピュータですが、実は計算結果が常に正しいとは限りません。例えば1÷3の答えは0.3333…と無限に続く小数になりますが、コンピュータで扱える桁数には限りがあり、どこかで数を打ち切る必要が出てきます。こうして毎回、四捨五入のようなことをしながら計算を繰り返すうちに、誤差はどんどん大きくなります。その誤差の範囲を正確に突き止め、数学的に正しい計算結果を高速で得ようというのが「精度保証付き数値計算」の研究分野です。コンピュータを、今の「正しい値に近い数を算出できるもの」から、「数学的に厳密な計算ができるもの」へと大きく転換させることを目指して、コンピュータで効率良く正しい計算をするための手法の開発に取り組んでいます。コンピュータでの計算の信頼性を高めることができれば、より正確な気象予報や災害シミュレーションの他にも、新材料の開発で重要となる物質の性質の正確な把握など、理工学や産業への幅広い応用が考えられます。着眼点やアイデア次第で、さまざまな分野とコラボレーションしながら新たな成果を出していける、非常に可能性が 大きな研究分野だと思います。答えのある個々の問題を解くことが中心となる高校までの勉強とは違い、大学では、問題を抽象化して考え、より 広い視点で問題の本質を捉えて理解することを目指します。例えば数学の講義では、急に難易度が上がったと 感じて戸惑うかもしれませんが、この抽象化する思考こそが大学の学びの醍醐味です。あきらめずに向き合った先に、あらゆる自然現象が数学をベースに記述される面白さや、学問を究める楽しさを体感してほしいと思います。早稲田大学教育学部卒業、同大学大学院理工学研究科博士課程修了。博士(情報科学)。早稲田大学客員講師、東京女子大学専任講師・准教授・教授を経て、2023年より現職。専門は数値解析、精度保証付き数値計算。荻田 武史基幹理工学部 応用数理学科 教授MESSAGE FROM PROFESSORコンピュータで正しい計算を効率良く行う手法の開発に挑む

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