TOPIC O2TOPIC O126理系の研究は問題解決を目指すものだと一般的には思われています。 しかし、私は問題を解決していくエンジニアリングというより、世の中でまだ問題になっていないような問いを立て、それを装置や仕組みの形で見せていくことを研究テーマに掲げています。領域としてはアートやデザインとも重なるため、美術大学などでも近い研究はできるかもしれませんが、 物理、化学、生物、数学など、学生たちの持つ豊富な理系的知識が思いがけないところで形になる点に、表現工学科で研究をする特長があります。例えば問いを立てたとき、機械の特性や生物の生態、プログラミングの知識などを踏まえて、手を動かしたり、新しい手法を理論的に構築したりするなど、理系の素養と発想力から得られるアウトプットはアートやデザインをバックグラウンドとする人とは少し違ったものになるのではないでしょうか。 基本的にはさまざまなものの潜在的な機能や価値などを開発したいと考えているので、今後も固定概念を打ち破れるようなメディアやインターフェースを作っていきたいと思っています。アートやデザインとも重なる領域で理系ならではの強みを発揮するブルーオーシャンにこそ研究の醍醐味がラボに入ったばかりの学生の中には、よく知られた研究領域名や研究キーワードを挙げて、そのような研究をやってみたいと希望する人が多くいます。 しかし、領域に明確な名前がついているということは、既に多くの研究者が活動しているということでもあり、むしろまだ名前もついていないブルーオーシャンな未知の領域で、面白いテーマや新たなアプローチをゆっくり試行錯誤できることが、大学で研究する醍醐味だと考えています。展示やワークショップなど学外でも積極的に活動学会発表に加えて、学外での展示やワークショップなども行っています。学会では専門的なディスカッションができる一方で、一般向けの展示では多くの方々に作品を見ていただけるメリットがあります。子どもを対象にしたワークショップを行うこともあり、幅広い年代の方から直接フィードバックを得たり、考え方を知れたりするので、学生にとって貴重な経験になっているようです。まだ問題になっていない問題を世の中に問いかける
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