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46中国古代史の研究は従来、約2000年前に書物として編まれた『史記』『漢書』などの歴史書をひも解き、当時の出来事や政治、思想を明らかにしていく手法が主流でした。しかし1970年代頃から中国各地の遺跡で、木片や竹に文字を記した木簡(もっかん)・竹簡(ちくかん)が相次いで見つかり、現在ではその数は数十万本にも上ります。木簡・竹簡は紙が普及する以前に古代の人々が記録材として使ったもので、その中身は、万里の長城の勤務シフト表もあれば、地方役人の日記、占い書もあるなど実に MESSAGE 日常史を解き明かすことで 歴史の裏側が見えてくるさまざまです。これらの出土文字資料から、当時の人々の生活がより具体的に分かるだけでなく、これまで知られていなかった歴史の記録が新たに発見されることもあり、中国古代史研究は いま日進月歩で発展を遂げています。『三国志』などを通して古代中国の英雄たちの活躍に関心を持つ人も多いことでしょう。では、当時の人々が朝何時に起き、何を食べ、どのような1日を送っていたのかを想像したことはありますか。中国古代史を長らく研究してきた私は近年、出土文字資料や考古遺物なども駆使し、人々の日常史を解き明かすことに力を入れています。当時の生活を具体的に復元することで、その時代を生きた人々の姿がより臨場感をもって浮かび上がり、教科書に記された歴史の裏側が見えてくるのが日常史研究の面白さです。私自身、これまで読み流していたような歴史書の細かな記述について、その背景も理解できるようになり、読み解く力が飛躍的に高まりました。2000年前の人々も仕事や家庭のことであれこれ悩んだり失敗したりしながら日々を送っていたと知れば、皆さんも何だか心が楽になるのではないでしょうか。歴史学と聞くと、あらかた研究され尽くしているイメージを持つかもしれませんが、決してそんなことはありません。問題意識や着眼点の持ち方次第で、探究するテーマはいくらでも見つかります。古代中国の経済や貨幣を専門に研究していた私が日常史に目を向けたのも、「当時の将軍はどれくらい給料をもらっていたのだろう」とふと疑問を持ったことがきっかけでした。世の中の不思議を自分で解明することができるのが、大学という場です。ぜひ自分だけのテーマを見つけ出し、思う存分に探究を深めてください。早稲田大学は、中国の研究機関と共同で高性能赤外線カメラを用いた木簡・竹簡の解読を進めるなど、出土文字資料の研究に早くから取り組み、実績を上げています。中国史の中でも秦漢時代を専門的に研究できる大学は国内でも限られ、 早稲田大学はその希少な一つです。INTERVIEW出土文字資料の研究で歴史と実績を持つ早稲田出土する文字資料を読み解き古代中国の人々の暮らしを探る

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