入学案内 (日本語)
49/238

45現場起点で考えることを重視MESSAGE 健康に関わる人権侵害について 政策面から課題解決を図る各国の健康権の状況をモニタリング社会科学部は基本理念として、学際性・国際性・臨床性を掲げています。ここでいう臨床とは、問題が実際に起きている現場起点で考えることを指します。担当するゼミでは、テーマに関係する機関や施設を学生が訪ねて話を聞くフィールドワークも行っています。自由に時間を使える大学時代こそ、自分の目で見て話を聞いて理解を深める経験を積んでほしいと思います。近年、「健康と人権」の問題に対して国境を越えた法的枠組みを検討しようという学問分野も発展してきています。この一環で、私は10年ほど前から、海外の研究者と共同で各国の健康権の状況をモニタリングする研究プロジェクトに参画しています。「気候変動と健康権」「タバコ規制と健康権」など、そのときどきの重要課題にフォーカスし調査に取り組んでいます。「健康権」という言葉を皆さんは聞き慣れないかもしれませんが、私たち一人 ひとりが持つ人権の一つとして国際人権条約等に定められています。私は日本における健康権の保障の状況や課題など、「健康と人権」に関する幅広い研究に取り組んでいます。法学研究には、法や人権の概念などを考える理論研究や、過去の裁判例を分析する判例研究などいくつかのアプローチがあります。私はこれらに加えて、国の政策の人権への影響をモニタリングし評価する政策アプローチにも注力しています。健康に関わる人権侵害は、ひとたび起きてしまうと、たとえ裁判を経て救済が行われたとしても、すで に当事者の健康や命が奪われて手遅れになるケースが少なくありません。人権侵害の発生を事前に防ぐことが重要であり、政策の策定や実施の段階で課題を見つけ対策を講じる意義は大きいと言えます。私たちは誰もが病気になったり障がいを抱えたりする可能性があります。その際に、差別や偏見なく必要なヘルスケアにアクセスできることは、すべての人が持つ権利です。その認識をまずは皆が共有することが、より良い社会への一歩になるはずです。早稲田大学では、キャンパス内外で学生が主体的に取り組んでいるさまざまな活動があり、それをサポートする環境もあります。ぜひ身近にある課題に関心を向け、改善のために何ができるのかを考え、実践を通して学んでほしいと願っています。WASEDA METHOD 研究

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る