法務研究科
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 早稲田大学法科大学院は、創設以来、『挑戦する法曹』の輩出をその目的として掲げてきました。本研究科がめざす『挑戦する法曹』とは、常に社会の変化を敏感に感じ、複雑で多様化した現代社会のニーズに即応して、様々な課題に敢然と挑戦し、新たな時代を切り拓く法曹です。 法曹の仕事の本質は、決して抽象的な法律を解釈・適用することにあるわけではありません。法律が適用される状況には、必ず血の通った人間がいます。人間の身体的な病理を解決するのが医療であり、それを担うのが医師であるとすれば、人間が社会的に交流する中で、必然的に発生する紛争や犯罪を予防・解決するのが法の役割であり、それを担うのが法曹の仕事です。正義と公平を体現する法の担い手として、日々人間を相手にし、その社会的な病理と向き合っていると言っても過言ではありません。 そうした点では、法律的な知識はもちろんのこと、人間的な力量もまた法曹として備えるべき重要な要素です。たとえば、深刻な病気になった場合に、どのような医師に相談したいと思うでしょうか。医師国家試験に優秀な成績で合格した人でしょうか。それとも、たくさんの患者を診察し、親身になって面倒を見てくれる医師でしょうか。答えは明確でしょう。医学に 本研究科は、司法試験のその先にある「真に実力を備えた法曹」を養成することを目標としています。広い分野にわたる法的知識、豊かな人間性、社会に対する鋭い感性。これらを磨き上げる過程が本研究科での学修となります。 こうした目的のため、授業学修だけで司法試験合格レベルまで到達できる教育プログラムが提供されることはもちろん、国内随一と言える企業法務、渉外法務、知的財産法務、租税法務、環境法務などの様々な法律実務分野を網羅した科目が用意されています。こうした専門分野の教育は、44名の専任教員と89名の兼担・兼任教員の総勢133名にのぼる第一線の研究者と実務家によって提供され、毎年300以上の科目クラスが開講されています。これは全国の法科大学院のなかでも最大級であると自負しています。 さらに、現実の法実務を学ぶ臨床法学教育は、わが国法科大学院の中でもトップと言って過言ではありません。現役の実務家(裁判官、検察官、弁護士)による実務基礎教育のみなら01関する知識はもちろん必要です。しかし、それ以上に一人の患者と向き合う姿勢を身につけた医師こそが、有能かつ信頼できる医師と言えるでしょう。法曹もまったく同じです。紙の上の知識だけでなく、人の「喜び」「苦しみ」「痛み」を理解できる豊かな人間性を持った法曹、それが本研究科の標榜する『挑戦する法曹』の重要な側面です。 さらに、法曹の仕事は建築家にたとえることもできます。建築家が設計図を描き、それにしたがって必要な資材を集め、建物を作り上げるのと同じように、法曹は社会の姿を法律や契約という設計図で描き、社会制度という建物を構築する役割も担っています。政府や地方自治体においても、あるいは企業や団体においても、社会の変化に対応した新しい制度の構築は、法的知識を備えた専門家によって進められています。その点では、法曹は決してすでに存在する法を相手にするだけではなく、これからあるべき社会を構想し、法的な設計図を描き、社会に発信していくことも求められています。社会の変化を鋭く感じ、その課題を的確に把握し、新しい制度のあり方を積極的に打ち出してゆく。そうした社会変革の担い手もまた、『挑戦する法曹』が目指す姿です。ず、学内に大学附設の法律事務所(弁護士法人早稲田大学リーガル・クリニック)を設け、さらに早稲田リーガルコモンズ法律事務所との連携によって、学生自らが現実の法律問題を取り組む臨床法学(クリニック)の授業が展開されています。また、実務現場を学ぶエクスターンシップでは総計160の法律事務所、官公庁、企業などの受け入れ機関が用意されています。これらは、法理論的専門性だけでなく、法曹としての事案分析能力など学生の法実務的能力も発展させることをめざしたものです。 また、アメリカ合衆国やカナダなどの海外の名門ロースクールと連携し、学位や法曹受験資格を取得できる交換留学制度を設け、世界に活動の場をめざす学生を応援しています。さらに、外国の大学からの留学生を多く受け入れて共に学ぶなど、学生が豊かな国際性を身に付けるカリキュラムを設けています。これらは、文科省の加算プログラムの採択などにおいて非常に高い評価を得ており、他の法科大学院にない大きな特徴です。新たな時代を切り拓く『挑戦する法曹』の育成充実したカリキュラムと実務教育

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