情報生産システム研究科 (日本語)
10/20

 集積システム分野では、集積回路や光半導体、MEMSなどの、いわゆる半導体デバイスに関する研究に取り組む研究室や、画像処理・音声信号処理・テラヘルツ波応用に関する研究に取り組む研究室など、「集積システム」をキーワードに様々な領域で最先端の研究を行う研究室が集結しています。 ここでは、集積システム分野の研究室の1つである集積システム最適化研究室(以下、山﨑研)について紹介します。山﨑研は2022年4月に大学院情報生産システム研究科に設置された研究室です。山﨑研では、最適設計の基礎研究ならびに、広い意味での集積システムやその関連周辺分野への応用研究に主軸を置いて研究活動を推進しています。最適設計とは、実世界の設計問題に対して● 設計変数 ■ 設計者が決めることのできる設計因子● 目的関数 ■ 最大化、あるいは最小化すべき設計対象の評価指標● 制約条件 ■ 設計対象が満たすべき条件を数学的に定め定式化し、数理計画法やメタヒューリスティクスなどを駆使して、最適(あるいは準最適)な設計解を導出する試みです。図中に示すのは、感度情報に基づく最も単純な部類の最適解探索の様子です。 設計変数の数が少ない、すなわち、設計自由度が小さい最適設計問題については、人間の勘や経験でも最適解やそれに準ずる解を得ることが可能ですが、設計自由度が大きくなると、勘や経験で最適解を得ることは極めて困難になります。例えば、図に示すのは、トポロジー最適化と呼ばれる構造最適設計法を用いて数十万の設計自由度を与えた上で得られた、橋梁・放熱器・電解液流路の最適構造です。いずれのケースでも、生物の形態にも似た極めて複雑な最適構造が得られますが、これらを勘や経験から導き出すことは、多くの人にとって容易ではないでしょう。従来、設計自由度の大きい構造最適化問題を解くのは容易ではなかったのですが、数学を基礎とした計算力学・物理シミュレーションの発展と計算機の高性能化により、図に示すようなユニークな最適構造が得られるようになってきました。 図に示した3つの最適構造が高い性能を発揮することは、物理シミュレーションでは容易に確認できます。一方で、これら複雑な最適構造を実際に製造するのは必ずしも容易ではなく、構造最適設計における大きな課題でした。しかしながら昨今、3Dプリンティング技術の発達に伴い、この課題も解決されようとしています。図に示しているのはPLAと呼ばれるプラスティック樹脂で試作した構造物ですが、3Dプリンティング技術の発展に伴い、使える素材の種類も劇的に増えて来ており、構造最適設計によるものづくりの革新がいよいよ現実のものになろうとしています。 グローバルな競争が常態化している今日、企業でのものづくりは最適であること、少なくとも最適を目指すことが求められており、人間の思考力の限界を超える構造最適設計は強力な武器となり得ます。構造最適設計で世界を変えたいという志ある学生の皆さん、応募をお待ちしています。研究紹介集積システム最適化研究室(山﨑慎太郎研究室)集積システム分野数学・物理・計算機の連携による、人間の思考力の限界を超えた高性能構造物の創造を目指す。09Graduate School of Information, Production and Systems, Waseda University

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る