学校案内2026-27_001060_250715_web閲覧用r1
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tnemmoC46私にとって建築は、節目節目で気になりつつもずっと踏み込んでこなかった世界でした。大学では地学、大学院では社会学を専攻し、就職後はクラウドファンディングや不動産再生に携わってきました。脈絡なく見えて、人の居場所について考え続けてきたのだと思います。建築に触れ始めたのは、建築界の周縁からまちや社会構造を変えていこうとする人々がきっかけでした。しかし、職業人としての立ち位置を考えるうちに、労働力を売るのではなく制作や技術で身を立てたい、考えを形にする腕を磨きたいという思いが強まり、芸術学校へと飛び込んだのでした。芸術学校のカリキュラムは、「ASSEMBLE」を掲げるだけあって様々な分野や背景、アプローチの先生から教わることができます。異なる授業の学びが自分の中で化学反応を起こしていく様はとても愉快です。その中でも、各授業での学びを統合するような位置付けで存在感を放つのが設計課題です。設計に正解はないとはいえ、建築的な表現作法や評価軸はあり、時に知らない試合に出場していたかのような切迫感を覚えます。現に私も2年生に上がってその世界観とスピードに振り落とされそうになり、塞ぎ込むことがありました。入学動機や設計テーマが切実であるほど、苦しいこともあると思います。ですが、困った時に助けを求められる先生や仲間も多くいるのがこの学校です。自分の創造性を慈しみ守ること、小さな成長を祝い合うこと、うまくいかない時だってあること、上手に飲み込めない所こそ個性であること…。設計を学んでいるようでいて、それ以上のことを学ばされています。他にも、建築セミナーや作品展といった学校行事、学生有志による見学会・勉強会、2年生からはスタジオ(作業場)など、学びと繋がりが豊かになる場が多くあります。それらを通して私は、互いの資源を持ち寄ることで全体がより豊かになるような環境を作る、それも設計なのだと思うようになりました。芸術学校での学びは、生涯学習と言うには肉体的にも精神的にもハードです。新しい物事の習得は現状の否定と隣り合わせでもあります。ですが、ここでの学びと仲間との時間が私の生活を彩っているのは確かで、苦しい時はその存在が私を繋ぎ止めてくれます。そんな学びの場を一緒に作りたいと思ってくれる新たな仲間の入学をお待ちしています。2nd yearProfessional class comment建築科2年在籍東京大学理学部卒業、新領域創成科学研究科修了不動産再生を手がける企業にて時短勤務「表参道ヒルズ」(2006 , 安藤忠雄)は当時中学生だった私に建築の魅力を教えてくれました。スロープがつくる巨大な吹き抜け空間や、反対側にいる人の動きを見ながらスロープを移動する体験は、とても衝撃的で言葉にならないほど感動しました。感動のあまり何度もスロープを行き来した覚えがあります。この時から建築に興味を持ち始めたのだと思います。大学は文学部への進学を決めましたが、美学美術史学を専攻し、その中でも建築史学を中心に建築について学び、卒業論文ではアントニオ・ガウディについて建築史的視点から書きました。趣味であった建築は大学では学問として関わることができ益々建築に惹かれていきました。建築物をめぐりながら、建築の歴史を学んでいく中で、この建築が良いと評価されている事と自分が良いなと感じた事との差異について、様々なことを言語化できるようになりました。その作業がとても楽しく、同時に建築を俯瞰するだけでなく、自分も建築に直接携わっていきたいと感じるようになりました。それに気づいたのが大学4年生の時でした。周りは就活を進めている中、自分は建築家になるか、企業に就職するか悩みました。その最中、この芸術学校を見つけました。個性を伸ばしながら、総合芸術としての建築を目指す理念に共感し、ナイトオープンキャンパスにすぐに応募しました。学校の概要の説明を受けた後、実際に授業の様子を見た際、設計課題に対して先生と生徒はもちろんのこと、生徒同士も熱心に話し合っている姿はとても楽しそうに見えました。そこで大学卒業後この学校に進学する事を決めました。 実際入学して一年が経ちましたが、想像以上に楽しく充実した学校生活を送ることができています。大学では同じ年代の人たちと一斉にスタートしますが、芸術学校では年代やバックグラウンドが異なる人たちが同級生になります。それぞれが異なる価値観を持っていて様々な方向から、色々な意見を交換しあえています。それが私にとって、とても居心地が良く感じています。お互いに刺激を与え合いながら、会話を重ねることによりそれが深みを増していく…この一年が密度の濃い時間であったのは、互いに切磋琢磨し合いながら建築について真剣に向き合ってこれたからだと思います。 趣味であった建築に学問として向き合い、今は作り手として向かい合っている。この経験は私だけの個性であると自信を持つことができます。芸術学校で3年間勉強することは今後の設計活動にとって大きな財産となるだろうと感じています。建築都市設計科2年在籍慶應義塾大学文学部卒業後、入学木村 佳菜子KIMURA Kanako太田 涼介OTA RyosukeCommentstudent

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